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2008年04月11日

NPOが結ぶ(4)北海道新聞

kiji4.jpg地域の価値 高めたい
 「先にドロノキを植えて日光をさえぎり、雑草を抑えてから植えればミズナラはよく育つんです」専門家の解説に、釧路管内浜中町の酪農家やNPO職員らが聞き入る。
 一行は、草地開発で減った浜中の森の再生を目指す「緑の回廊」推進委員会のメンバーだ。酪農家に植樹を呼びかけ、NPO法人霧多布湿原トラストなどとの「協働」で植樹技術の向上や賛同者の拡大を模索する。
 「緑の回廊」は、タンチョウが舞い、魚が泳ぐ自然環境の中で「安全、安心、高品質」の生乳を生産し、消費者の信頼を得たいという酪農家の情熱から生まれた運動だ。この努力を消費者に伝え、浜中産の生乳の価値を高めたい。同トラスト職員の河原淳さん(48)はそう構想する。
 ラムサール条約登録湿地の霧多布湿原をはじめ魅力的な自然と、その中で営まれる観光業、農漁業、それを担う人々。同トラストはそれらの地域の「資源」を結びつけて「価値」を高め、全国に発信してマチの未来を切り開こうとしている。
 発足から22年、今は専従職員8人の態勢だ。うち本州出身は5人。一方、役員の大半は地元の住民だ。遠くから「風」を運ぶ人と、土着の人との連携がネットワークと事業の幅を広げるのだ。
 三膳時子理事長(50)は語る。「湿原のきれいな部分を守りたいと運動を始めたが、それ以上に人と人とを結ぶ仕事が大きくなった。トラストは、地域の結び役でありたい」(おわり)
(原文:北海道新聞厚岸支局 中川 大介 文編集:霧多布湿原トラスト 松井 美奈)

2008年04月10日

NPOが結ぶ(3)北海道新聞

kiji3.jpg「民」の肉声 「官」動かす
 釧路管内浜中町内の小売店の全店近い56店がレジ袋を有料化した。石油資源の無駄遣い抑制へ、道内初の全町一斉実施を店側に求めたのは町だが、その決断を促したのは住民組織のレジ袋削減検討委員会だ。
 委員10人のうち2人は町内の霧多布湿原トラストの役員だ。町の吉家裕明係長(52)は「役所の期待通りの発言はしてくれないが、NPOからは斬新な発送が出てくる。
 3年前、町は公設の霧多布湿原センターの運営を任せる「指定管理者」に同トラストを選んだ。財政難から予算・体制を縮小し、活気をなくして入館者が減るセンターの活性化の道を、民営化に求めたのだ。ただ、同トラストは単なる「下請け」に甘んじなかった。
 町は「委託は3年間」としたが、トラスト側は「専門技能を持つ職員を雇い、観光振興や環境保全を腰を据えて進めるには5年必要」と主張し、「年2750万円で5年間委託」に。長谷川徳幸町長(64)は「NPOと行政が対等に向き合ってこそ協働は可能だと実感した」と振り返る。
 町内の観光入り込みが減る中、湿原センターの入館者回復は容易ではない。だが、一過性の団体客より何度も足を運ぶ「浜中ファン」増加を目指す同トラストの試みは、新しい可能性を切り開こうとしている。

(原文:北海道新聞厚岸支局 中川 大介 文編集:霧多布湿原トラスト 松井 美奈)

2008年04月09日

NPOが結ぶ(2)北海道新聞

kiji2.jpg「自然と共生」広がる輪
 2008年2月、東京都府中市で霧多布湿原ファンクラブ東京が開いた「設立5周年記念のつどい」。約120人の出席者の顔ぶれは実に多彩だった。元プロ野球のコミッショナー、作家、財務省や日本経団連の幹部、主婦-。
 「守るのは地元、支えるのは都会」がスローガンのファンクラブは東京、関西、九州など全国に5つ。同トラストの会員拡大に徹し、活動には口をはさまない。「つどい」も会員拡大が目的だ。
 自然との共生を、個人や企業、行政と協働して進めるのが同トラストの基本理念だ。ただ、企業も人も少ない地方では資金獲得に限界がある。東京から釧路管内浜中町に移住して霧多布湿原にほれこみ、住民と運動を立ち上げた伊東事務局長(57)は都市部に住む知人・友人に協力を求めた。現会員は個人・法人合わせて2700人。うち44%が関東地方だ。
 会費や寄付金を柱とする収入は徐々に増え、これを原資に湿原でのエコツアーや農漁業体験旅行の受け入れなど活動を広げてきた。
 都市の住民が地方の自然保護を叫ぶことに「自然も自分たちには生活の場。保護を押しつけるな」と反感を抱く住民は浜中にも少なくない。だが、栗本英弥・町商工会長(64)は「産業や暮らしを含めて地域全体で自然と共生する視点を打ち出し、それを支える全国的なネットワークを作った意義は大きい」と指摘する。都市と地方を結ぶ活動が示唆するものは多い。

(原文:北海道新聞厚岸支局 中川 大介 文編集:霧多布湿原トラスト 松井 美奈)

 

2008年04月08日

NPOが結ぶ(1)北海道新聞

kiji1-3.jpg「豊かさ」実感を後押し
霧多布湿原の広さは3168ha。約2万haの釧路湿原に比べればこぢんまりとして、周辺部は民有地だ。その保全に取り組む霧多布湿原トラストは近年、子ども自然クラブやワンデイシェフなど新機軸を次々と打ち出している。
子ども自然クラブは2年前に始まった地域の自然に目を向けてもらうための自然体験活動だ。会員120人の9割以上は地元の子。浜中町立姉別南小2年の三田丈司君(7つ)は「森の体験が面白い。トラクターで行くのと違って、虫とか鳥の骨とか、いろんなもんが見つかるんだ」
昨年から月1回開いている「ワンデイシェフ」は、住民が地元の食材を使い、月替わりの1日シェフとしてランチの腕を振るう催しだ。町内外にファンができ、毎回20~40食を完売する。
子ども自然クラブとワンデイシェフ。ともに自然、食材など地域の「豊かさ」を住民や来訪者が実感する試みだ。そこから、地域をまるごと守る力が生まれると、同トラストは期待する。
過疎、自治体の財政難、漁業や農業の疲弊-。人口約7000人の浜中町が直面する現実は厳しい。だがここには、さまざまなものを結び、未来を切り開く動きがある。

(原文:北海道新聞厚岸支局 中川大介 文編集:霧多布湿原トラスト 松井 美奈)